ネコちゃんの慢性腎臓病のお話③(治療管理)
2022.11.15更新
今回は、ねこちゃんで多く見られる慢性腎臓病の治療および管理につきまして投稿しようと思います。
【慢性腎臓病の早期発見】や【検査および診断】は以前のブログに載せてありますので、こちらも併せてご覧ください。
ネコの慢性腎臓病の治療管理につきましては、腎臓病のステージ(Ⅰ~Ⅳ)に基づいて多種多様な治療や管理方法があります。愛猫さん、オーナー様のご理解や協力を元に可能なことを行い、残存している腎臓の機能を出来るだけ保護して病気の進行を遅らせることでQOLの向上を目指すのが目的です。
よって以下に述べるすべてを治療するのではありませんし、もちろん費用や、ねこちゃんの性格等をみて検査、治療を飼い主様と話し合って決めていくのが当院での方針です。
<家庭での対策>
家庭では十分に水をのめるような環境をつくりましょう。新鮮な水を常に用意、好みの水を見つける(水道水、特定銘柄の水、お風呂の水、好みの容器をみつけるなど)、またネコちゃんに飲水のチャンスを増やす(水を随所に配置、風呂場の戸を開放しておく、ヘルスウォーターボールなど)
<脱水への対応>
乳酸リンゲル液による皮下輸液をおこないます。 輸液量や回数は脱水の状況にもよりますが、150~250mlを1日~3日毎に行うのが一般的です。通院で対応が可能ですが、ご事情によりご自宅での処置も可能です。(多少の訓練が必要です)この場合はブドウ糖を含む輸液は使用できません。
脱水が重度になると静脈点滴が必要となります。この場合血液検査の結果によりKなどの電解質の補正やビタミン剤やブドウ糖も添加可能です。基本的には入院治療となりますが、半日お預かりで日中点滴する場合もございます。
<食事について>
腎臓病の処方食を利用するのが一般的です。ほとんどの腎臓病食は中程度の蛋白とリンを制限しております。ただし腎臓病で食欲不振になっている子に極端な食事療法をお勧めしない場合もあります。 これは、極端な蛋白制限は筋肉量を減少するのでよくないと考えられているからです。強制給餌をするという方法もございますが、無理にやると今後その食事を一切受け付けてくれなくなる子もおりますし、チューブなどで行う場合はオーナー様のご理解が必要です。ご相談いただければ食欲増進剤を使用するケースもあります。
<嘔吐に対する対応>
慢性腎不全の進行とともに高窒素血症となり、胃酸を抑止する薬や制吐剤などの注射や飲み薬を使用することがよくあります。これによって悪心、嘔吐を抑制して食欲や脱水の改善を期待します。
<貧血に対する対応>
腎臓のはたらきが低下すると腎臓から産生されるエリスロポエチンというホルモンの分泌が減り、赤血球をつくる能力が低下することで貧血になります。
慢性貧血になると、活気や食欲低下につながります。当院ではヒト組み換え型エリスロポエチン製剤であるダルベポエチンの週一回の皮下注射をおこなっております。また鉄剤を併用することもあります。抗体が出来てしまうと効果がなくなるので、ある一定レベルに改善したり、まったく効果がない時は中断しております。
少し長くなりましたのでその他の治療につきましてはまた後日掲載したいと思います。