去勢・避妊手術について
去勢・避妊手術は、望まない妊娠や繁殖を防ぐだけでなく、将来的に発症リスクの高い疾患の予防にもつながります。一方で、全身麻酔を伴うため身体への負担があることも事実です。飼い主さまそれぞれにお考えがあるため、当院から無理におすすめすることはございません。メリット・デメリットを丁寧にご説明し、十分にご理解いただいたうえでご判断いただくことを大切にしております。

去勢・避妊手術を行うメリット
ホルモンバランスの乱れや発情期が原因のストレスの軽減
特に女の子は、発情期にホルモンバランスが大きく変動することで体調を崩しやすくなります。男の子も性的な興奮による強いストレスから、攻撃的になったり、相手を探して外へ出てしまったりすることがあります。去勢・避妊手術は、このようなストレスの軽減が期待できます。
高齢期にかかりやすい病気の予防
男の子が去勢手術により予防できる病気
会陰ヘルニア
肛門付近の腸を支える筋肉が薄く弱くなり、隙間ができることで腸や腹腔内の臓器が皮膚のすぐ内側に飛び出してしまう病気です。脱出する臓器によって症状は異なりますが、特に多いのは排便がしづらくなることです。膀胱が入り込んだ場合は尿が出なくなり、緊急性の高い状態となります。発症の詳しい仕組みは明らかではありませんが、未去勢のワンちゃんに多いことから、精巣ホルモンの影響が一因と考えられています。
肛門周囲腺腫
肛門周囲に発生する腫瘍で、肛門を取り囲むように大きくなることがあります。腫瘍が破裂すると化膿し、膿や出血が続く場合もあります。また、腫瘍が肛門を圧迫することで排便が困難になることもあります。進行すると、肛門全体を切除する手術が必要となるケースもあります。
前立腺肥大
精巣から分泌される性ホルモンの影響により、前立腺が肥大することがあります。前立腺は膀胱の出口付近に位置しているため、大きくなると尿道を圧迫し、尿が出にくくなります。また、近くを通る結腸や直腸も圧迫されることで、便が出にくくなることもあります。さらに、肥大が進行すると細菌感染を起こしやすくなる場合があります。
精巣の腫瘍
高齢になると、精巣に腫瘍が発生することがあります。腫瘍ができると他の臓器へ転移する可能性があるほか、分泌されるホルモンの影響で重度の貧血を起こし、命に関わることもあります。また、精巣が陰嚢内に収まらず、お腹の中や皮下にとどまっている場合(停留精巣)は、将来的に腫瘍化するリスクが高いとされています。そのため、早めの去勢手術をご検討いただくことをおすすめいたします。
女の子が避妊手術により予防できる病気
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、子宮内で細菌が増殖し、膿がたまる病気です。中~高齢のワンちゃんに多く、発情から数か月後に発症することが一般的です。水を多く飲むようになったり、外陰部から分泌物がみられたりすることがありますが、外に出ないタイプもあります。進行すると元気や食欲が低下し、細菌の毒素が全身に回って腎不全を引き起こし、命に関わることもあります。治療は子宮・卵巣の摘出手術が基本ですが、術後も腎機能に注意が必要です。なお、避妊手術によって予防が可能な病気です。
卵巣腫瘍・子宮腫瘍など
卵巣や子宮に発生する腫瘍には、良性のものと悪性のものがあります。これらの腫瘍は、若いうちに避妊手術を行うことで発症リスクを大きく減らすことが可能です。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、いわゆる「おっぱいのしこり」です。発生した乳腺腫瘍のうち、ワンちゃんでは約半数、ネコちゃんでは約9割以上が悪性といわれています。良性であれば切除により良好な経過が期待できますが、悪性の場合は再発や他臓器への転移を起こし、命に関わることもあります。乳腺腫瘍の発生には卵巣から分泌される性ホルモンが深く関与しており、ホルモンの影響を強く受ける前の若齢期に避妊手術を行うことで、発症リスクを大きく低減できるとされています。
去勢・避妊手術を行うタイミング
ワンちゃん・ネコちゃんの成長スピードや体格により異なりますが、一般的には生後6か月前後が目安です。
去勢・避妊手術の際の注意事項/去勢・避妊手術後のケアについて
去勢・避妊手術は全身麻酔下で行うため、事前の健康チェックが重要です。術前の状態によっては延期をお願いする場合もあります。
また、術後は安静を保ち、傷口を舐めないよう注意が必要です。食欲や元気の有無、排尿・排便の様子をよく観察し、気になる変化があれば早めにご連絡ください。